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あんま小説読まないけど神林長平のプリズムが面白かったから、紹介するよ!

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僕は読書はよくするのだけれど、小説はあまり読まない。日本語力をつけるためには小説を読むのはいいと思うけど、どうしても小説は知識の類はあまり含まないので、時間の無駄のように思えてしまうからである。そう考えると自分はあまり読書が好きというよりも、社会から何となく取り残されるのが嫌で、我慢して難しそうな本を読んでいるだけなのかもしれない。

そんな僕がなぜかたまたま、ふとした拍子に神林長平プリズムという本と出会い、予想以上に面白かった。そんなに長くないのでサクッと読める。SF小説でちょっとファンタジー的な要素も入っている。

 

         神林長平

  • 日本のSF作家

  • 日本SF作家クラブ11代目会長

  • 代表作 「敵は海賊」シリーズ、「戦闘妖精・雪風」シリーズ、死して咲くはな、実のある夢、言葉使い師など。

  • 人間と機械、意識と言語、現実と非現実をテーマに多くの作品を残しているSFの大御所。

同じ世界観の異なる側面を1章ごとに描いていく

読み手は章が変わるごとに別の設定の話かと思い、さらに読み進めていくうちにちゃんと関連性を持っていることが分かるようになっている。僕たちの社会と同じように普通の人間たちが暮らす中間界リンボウには空中都市制御体と呼ばれのものがあり、社会のすべてを管理している。人間なのに、その制御体に全く認識されずに、存在を認められずに育った少年がほかの人間には見えない堕天使に出会ったところから話は始まる。いかにもSFっぽい設定で想像力が掻き立てられる。何のためにこの制御体が作られたのか。制御体は何を象徴したものなのか、ということは読めばわかる。

下層のルービィランドは色の世界で、色たちが生き物であるかのように生き生きと描写してあるのも面白い。

 

朝になると色たちが下りてきます。

色の重みをためて朝露が草の葉先から落ちます

朝露は空中でさらに微小の玉になって散ります

そこから無数の色の使い魔が生まれて世界を満たすのです

色たちは自分たちが落ち着く場所を探します。この騒ぎがおさまると昼です。

緑は樹々に。紅は炎に。笑う色は風に、乗ります。元気な人には元気な色が、むつかしい人にはむつかしい色がつきます。色が遠慮するところが影になります。

遊び疲れた色たちは、一つまた一つ上へ帰っていきます。夕暮れになります。

夕方まで元気良く飛び回っているのは赤の兄弟たちと彼らの使い魔たちです。それでぼくらの顔も服も、水も土も樹も風も、彼らの色に染まります。

                                                                                                    ___ 本文より抜粋

ルービィランドのルービィとはその世界で信じられている神のような存在でルービィ・ルーブリックという経典のようなものを残している。主人公の前に現れるルービィが一貫して説くのは、心して想え、ということである。自分がどんなに強く願っていたとしてもそれが常にかなうわけではなく、この宇宙は常に自分も含め多くの者の想いが錯綜している。それはあたかも目に見えない風の流れや、水の流れや、エネルギーの流れのように方向性と物理的な力をもって時には合わさり、時には反目し合い一つの結果を生む。ぼくの拙い日本語でのイメージではあるけど、複雑そうに見えて実は単純な原理を持った世界を神林長平は見ていたのではないかという、そんな気がする。

言葉と想いの対立

青の将魔ヴォズリーフと緑の将魔エスクリトールの激突において、それぞれが操る創想能力創言能力というのも、本来連続するべき言葉と想いを対立するものとして描いたのも面白い。元来言葉というものは自分の想いを表現するための手段である。だが、平素において言葉がその役割を果たしていないことはあまりにも頻繁に起こりうるのが僕たちの生活ではないか。時には言葉をもって自分の想いを矯正しようとすることさえある。言葉にした瞬間からそれは自分から切り離され、そして自分自身に影響を与え始める。想いに反発し始めるということである。

最後の章において、刑事の男が自分の妻にやってくれと頼んだ言葉が、想いと一つになったがゆえに、一度は自分の命も存在も失った刑事が再び帰路につくことができたのではないか。しかし、本当に神林長平が背後に見ていたものはもっと別の何かなのかもしれない。ちなみにプリズムとは光を通すと波長によって光の屈折の角度が変わり、それぞれの光に分かれて出てくるガラスなどでできた多面体のこと。

プリズム