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不確定性原理が保護する世界

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前回、不確定性原理について紹介した。
それによれば、ミクロの粒子は完全な確実性で位置と運動量の両方を知るのは不可能である。そしてそこには交換条件がある。位置を正確に突き止めれば、運動量はそれだけ不明確になり、運動量を明確に突き止めれば、位置はそれだけ不明確になる。

トンネル効果

量子論の世界でトンネル効果と呼ばれるものがある。不確定性原理故に起る近しい現象である。結果としては、エネルギー的に明らかに不可能な障壁をミクロな粒子はまるで幽霊のように通り抜けることである。無数の粒子がある中で確率的にトンネル効果を発揮する。割とよく聞くものとしては、アルファ崩壊がそれにあたる。

原子核から飛び出す、アルファ粒子

アルファ崩壊という現象がある。それはアルファ粒子(ヘリウム原子)が原子核を振り切って、ものすごいスピードで外に飛び出す現象である。
放射性元素は比較的不安定な元素として存在する。そこで時間経過と共に、ときおり原子核からアルファ粒子を放出してより安定な原子核に変わることがある。もちろんアルファ崩壊だけでなく核分裂をして安定化することもある。というよりアルファ崩壊は核分裂の一種と考えてもいいかもしれない。要は分裂する核の片方がものすごく小さくなったものである。
 しかし考えてみれば、このアルファ粒子を放出するというのはおかしなことだ。原子核を構成する陽子や中性子は、核力によって結び付けられている。核力は有名な強い相互作用の一種で、効果範囲は狭いがめちゃくちゃ強い。にもかかわらずアルファ粒子はその束縛を振り切って核の外に飛び出す。なぜだろうか?
これはまさに不確定性原理による。原子核の中のアルファ粒子は核に束縛されているので空間的に極めて局所的である。つまり位置が正確に突き止められている。ということは必然的に運動量ははなはだ不明確になりうる。なりうるといったのはもちろんすべてではなく、確率的にものすごい運動量、または速度を獲得するアルファ粒子が現れるということである。それによって本来超えることのできない原子核からのエネルギー的な障壁をいとも簡単に抜け出すことができる。これがトンネル効果とか量子トンネルとして知られた現象である。
 簡単に言えば粒子はみな、位置を突き止められることに反発すると考えればよい。位置を突き止められれば突き止められるほど、時折ものすごい運動量。エネルギーを獲得する。このようなことを考えると不確定性原理は量子論またはこの世界で起こる現象を保護するためにあるといってもいい。

そしてこのアルファ崩壊で見たトンネル効果が、核から出ていくだけでなく、核に入ることも起こる。それが太陽がなぜ輝くか?ということを可能にする。

太陽はなぜ輝くか?

太陽の組成のほとんどは水素原子とヘリウム原子でなっている。水素原子が核融合を起こし、ヘリウム原子になる過程で大量のエネルギーを生み出し、光や熱となって地球に届いている。核融合を起こす強い相互作用は効果範囲が極端に狭い。そのため核融合を起こすには、水素原子の陽子と陽子がものすごく近づき合わなければいけない。しかしふつうその前に陽子同士は同じ正の電荷をもつので電気的に反発する。核融合を起こすためにはそれだけすさまじい速さで原子核が衝突しなければならない。
物理学者の計算によると、そのために必要な太陽の温度は100億度であるらしい。しかし実際の太陽の中心の温度は1500万度に過ぎない。全然足りない。
原子核同士が近づいて反発するのはあたかもその間に障壁ができるようなものである。つまりここでもトンネル効果がその力を発揮し、その障壁を乗り越え、太陽は核融合をして、僕たちが生きるのに必要なすべてのエネルギーを生産しているということである。

原子の存在を保つ不確定性原理

以前原子の発見の歴史について簡単に記事を書いた。その最後でラザフォードの原子モデル、原子の真ん中に極めて小さな原子核があり、その周りを電子が回っている、は電磁気学の観点から、実現不可能だった。
実はこの問題を解決し、原子の存在を保っているのも不確定性原理による。
まずラザフォードのモデルがなぜ無理なのか?マクスウェルの電磁気論によると運動する電子は光を放つはずである。光を放つということはそのエネルギーは電子自身からしか持ってくることはできないし、光を放ち続ければ電子はエネルギーを失い、どんどん原子核に引っ張られていく。計算によるとものすごく短い時間で電子は原子核に落ち込んで陽子と反応しつぶれてしまうはず。しかしそんなことは起きない。
 それはなぜかというと不確定性原理によれば、電子は原子核に近づくことができないからだ。先ほどのトンネル効果の説明と同じである。もし原子核に固定されれば、位置が特定される。電子は其れに反発し、運動量を得る。量子論では、それを零点エネルギーといい、ポテンシャルエネルギーが最小の状態でも零にはならない。そしてそれはなぜ物質が形を保ち続けるのかを保障している。  さらにもう一つ、それは原子がなぜそれほど大きいかということを説明する。

原子核に対して広大に広がる電子

標準的な原子は、その原子核よりも約10万倍も大きい。原子はスカスカで何もない空間がほとんどである。なぜこれほど広い範囲を電子は飛び回ってるのか?原子核の中の陽子は電子よりも2000倍の質量をもつ。運動量は質量×速度なので、もし電子と陽子が同じ十分に狭い空間に閉じ込められれば、不確定性原理により、電子は陽子の2000倍のスピードで動くはずである。
しかし、原子は原子核の2000倍大きいのではない。10万倍である。なぜか?
 それは電子と陽子を縛る力が違うことによる。原子核の中で陽子を結び付けているのは強い相互作用と呼ばれるもので、その特徴は、効果範囲が狭い代わりに力はかなり強い。一方電子はそれに比べるとはるかに弱い電気的な引力で原子に縛られている。

白色矮星と中性子星

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最後に大きな星が寿命を全うする中でたどる二つの状態、白色矮星と中性子性についての話。
これは同一の星の、重力にあらがう状態の違いをさして使う言葉である。
太陽を例に見ていくと、多くの星は多量の気体が集まって出来ている。その質量が膨大なので、当然すさまじい重力を及ぼしている。もし何もなければそのまま自らの重力で星はつぶれてしまう。そうならないということは何かしらの力が内向きの重力と釣り合っている。太陽の場合、内部が燃えることによって外向きの力を産んで、重力との均衡を維持している。しかし当然太陽の燃えるのは無限ではない。いずれ燃料を使い果たし、重力の力がより強くなるようになる。するとどうなるか。
 星は重力によって押しつぶされどこまでも小さく縮んでいく。でも完全につぶれてしまうのではない。密度の高い星の内部では、原子がものすごいスピードで飛び交っている。それらが激しい衝突を繰り返し、電子をはぎ取っていく。その電子がまとまってますますぎっしり詰め込まれるにつれて、ここでまた不確定性原理により、電子は押しつぶされる力に対するように外向きの力を産みだすようになる。結果的に星の収縮を遅らせ、内向きの重力との間に新しい平衡に達する。この状態を白色矮星という。
この状態を永遠に続くのではない。やがて電子の抵抗さえも重力が押さえつけるようになる。行き場を無くした電子は、小さな場所に閉じ込められることをあれほど嫌っていたが、原子核と接触し、陽子と反応し中性子になる、星全体が一つの巨大な中性子の塊になる。これが中性子星である。この状態はすでに以前紹介したスカスカの原子に対して、その隙間をすべて絞りだあして超高密度を実現している。

参考文献(下はamazonリンクです。)

量子論で宇宙がわかる (集英社新書)